新刊紹介・書評

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新刊紹介大島明秀『細川侯五代逸話集』(熊日新書、2018年1月24日刊、1000円)が出た。筆者が熊本県立大学で日本史を教えているなかでの題材「随聞録」を読み解いた史料集でもあり解題集でもある。

「随門録」は、細川家祖丹後国主幽斎に始まり、小倉藩主忠興、初代熊本藩主忠利、光尚、綱利の五代にわたる全五十五話に及ぶ逸話集で近世後期に編さんされたものである。興味深い内容をもつこの記録を現代語訳し、解説をくわえて専門性を持ちながらも可能な限り一般に読みやすいものを心がけたという。

第二章は、解題編とし、諸本の異同や特徴を踏まえ、近世後期に編さんされた細川家史「綿考輯録」との影響関係について検討し、歴史的事実と逸話との関係性についても解説した。

第三章は、研究資料として利用できるように、すでに複数の写本で校合してある熊本県立図書館上妻文庫本を底本として、京都大学附属図書館谷村文庫本と公益財団法人永青文庫本を付き合わせて、校訂版を作成してある。

エピソードを読むと、細川忠興はやたら家臣らの首をはねる人物であった。ガラシャ夫人(明智光秀の三女で熱心なキリシタン)が食事のとき、その椀のなかに一本の髪の毛が入っていた。ガラシャは夫の気性を知っていたので、そっと髪の毛をとって中椀に入れて蓋をされた。忠興はそれをみていて、お椀の蓋をとり、髪の毛を確認して、料理人の首をはね、ガラシャ夫人の膝の上においた。すると、ガラシャ夫人は一言も発せられず、身動きもせず、終日そのままの姿でじっとしていたので、忠興もすまぬことをしたと思い、声をかけるとようやくガラシャ夫人も、お膝の首を取り除かれたとのことである。このようなエピソードが55話あって、現代語で読むと、当時の藩主の生き様を小説のように楽しめるのだが、第1章を読み終えた読者が、第二章解題と第三章校注へと進むことで、歴史資料にとりくみ、新たな発見をするという歴史研究の新たな旅へと誘うようなしかけが、註や参考文献が提示されている。よく練れた歴史探究書となっている。

 

新刊紹介『病と向き合う江戸時代』
◆岩下哲典さん(現在は東洋大学教授)から『病とむきあう江戸時代』(北樹出版、2017.9.15、2500円プラス税)と『津山藩』(現代書館、2017.10.10、1600円プラス税)を贈っていただいた。
◆岩下さんは、長野県塩尻市北小野出身の若手研究者、と思っていたらもう50歳を4つほど過ぎたという。岩下さんが学生の頃からの知り合い。北小野というところは支配が入り組んでいて面白い地域なのだが、それはまた別の機会に書くとして、岩下さんの健筆に驚くとともに多謝。
◆後者は時間があるときに詳しく紹介したい。前者は、外患・酒と肉食、うつと心中、出産、災害、テロについてのトピック的な本。
◆病に関する記述は「うつ」あたりだが、これもうつにかかった武士に対する休暇がどうあったかというもので、それはそれで面白いが、表題に惹かれた人にはやや違う感想をもたれるかもしれない。
◆酒と肉食に出てくる箕作阮甫の『西征紀行』については、藩医の出張旅行における酒・肉食の物語。『西征紀行』については、かねてから関心があったので、後日、これも佐賀藩の記述を詳しく紹介したいと思っている。まずは紹介と御礼まで。

 

鳥井裕美子『前野良沢』―生涯一日のごとくー

前野良沢については、岩崎克巳『前野蘭化』が定評ある書であったが、やや専門的だったのと、古くなって入手しにくくなっているので、鳥井氏が以前編纂した『前野良沢資料集第一~三』(大分県立先哲史料館)所載の資料をもとに、新事実を入れて描いたもの。 たとえば、前野良沢といえば『解体新書』の翻訳の指導をした人物であるが、『解体新書』には、前野良沢の名前はなく、杉田玄白刊行となっている。その理由は、従来、太宰府天満宮への誓いなどいろいろ取りざたされてきたが、鳥井氏は、玄白が外科であったのに対し、良沢は内科であり、解剖学への興味も玄白とは随分温度差があったろうし、あまりにも誤訳の多いままに刊行されようとする『解体新書』に、オランダ語学者としての学究肌の良沢の自負が、ともに名前を掲載されることを拒んだことが実相であろうとする。また、『解体新書』の典拠は『ターフェル・アナトミア』のみではなく、桂川甫周蔵『ブランカール解体書』(ブランカール解剖書)などからも加えていることなどを、耳の図(左が『解体新書』の耳図、右が『ターフェルアナトミア』の耳図)などで紹介しているなど、わかりやすい。寛政期には、ロシアの南下に伴い、ロシア語研究に打ち込み、「柬砂葛記」「魯西亜記本紀」などを残しており、晩年の江馬蘭斎の入門、大槻玄沢や藩主奥平昌高らとの交流、没後の評価などを描いており、『解体新書』以後の良沢の活動もていねいに描かれている。

◇鳥井裕美子『前野良沢』(思文閣出版、2015年3月31日刊、2500円+税)

 

 

7月4日第一回研究会 多久歴史資料館

15K02867 「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究」
研究代表者(所属機関・部局・職・氏名)
             佐賀大学地域学歴史文化研究センター・特命教授・青木歳幸
 
           27年度第1回研究報告会開催要項

下記により科研費「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究」
(略称:種痘伝来)27年度第1回研究報告会を開催しますので、ご参集ください。

               日程
7月4日(土) 13時~   多久市郷土資料館(現地集合)
               〒846-0031 佐賀県多久市多久町1975
                              電話 0952-75-3002
 13時15分~15時00分
                多久御館日記ほか種痘関係資料調査
 15時00分~ 「種痘伝来」第1回研究会(各自研究状況報告)
       ・青木歳幸「本研究の目標と課題について」
               ・青木歳幸「多久領の種痘」
               ・ミヒェル・ヴォルフガング「中津藩の種痘資料」
               ・大島明秀「熊本藩の医学資料の現状」
       ・海原亮「医師の医学修業について」
17時00分 終了

※連絡先 佐賀大学地域学歴史文化研究センター
              特命教授 青木歳幸 TEL/FAX 0952-28-8378
                          携帯 090-4015-8603

研究会終了後郷土資料館の見学しました。
Wolfgang Michel-Zaitsuさんの写真







Wolfgang Michel-Zaitsuさんは多久聖廟で青木 歳幸さんと一緒です

7月5日 ·
https://scontent-hkg3-1.xx.fbcdn.net/hphotos-xap1/v/t1.0-9/11707531_10204958641421368_957884993922367558_n.jpg?oh=81140b3304e00717c84c3ecb34a2111e &oe=56A2581F

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Wolfgang Michel-Zaitsuさんの写真

新刊紹介・書評」への1件のフィードバック

  1. 新刊紹介『病と向き合う江戸時代』
    ◆岩下哲典さん(現在は東洋大学教授)から『病とむきあう江戸時代』(北樹出版、2017.9.15、2500円プラス税)と『津山藩』(現代書館、2017.10.10、1600円プラス税)を贈っていただいた。
    ◆岩下さんは、長野県塩尻市北小野出身の若手研究者、と思っていたらもう50歳を4つほど過ぎたという。岩下さんが学生の頃からの知り合い。北小野というところは支配が入り組んでいて面白い地域なのだが、それはまた別の機会に書くとして、岩下さんの健筆に驚くとともに多謝。
    ◆後者は時間があるときに詳しく紹介したい。前者は、外患・酒と肉食、うつと心中、出産、災害、テロについてのトピック的な本。
    ◆病に関する記述は「うつ」あたりだが、これもうつにかかった武士に対する休暇がどうあったかというもので、それはそれで面白いが、表題に惹かれた人にはやや違う感想をもたれるかもしれない。
    ◆酒と肉食に出てくる箕作阮甫の『西征紀行』については、藩医の出張旅行における酒・肉食の物語。『西征紀行』については、かねてから関心があったので、後日、これも佐賀藩の記述を詳しく紹介したいと思っている。まずは紹介と御礼まで。

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