研究内容

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科研費c「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究」(『略称:種痘伝来』)3年間の主な研究成果は、個々の研究発表・論考のほか、全体として、『天然痘との闘いー九州の種痘ー』(岩田書院、2018年5月)と、研究報告書・史料集『史料・九州の種痘』(「2018年3月)の刊行を予定し、すでに原稿をそれぞれ入稿し終えた。(2018年1月)

研究実績  三年間の種痘伝来科研において、多くの成果を得た。なかでも嘉永2年(1848)の牛痘の伝来日と牛痘接種日について、従来、諸説あって確定できていなかったが、本研究によって柴田方庵の記録より、伝来日が嘉永2年6月23日で、最初の牛痘接種日が6月26日であることが、日本側史料によって確定できたことが大きな業績である。さらに佐賀藩では同年8月から引痘方が設置され、安政5年(1858)に設立された好生館で全額藩費による組織的な種痘活動が行われたこと、萩藩では9月21日に佐賀藩から分苗されたこと、大村藩は、7月24日に痘苗を得て8月1日から藩主導で実施し、種痘苗保存確保のために「牛痘種子継料」を全村から徴収していたこと、中津藩では民間医辛島正庵らが長崎から痘苗を得て、種痘普及のために文久元年(1861)医学館を創設したこと、西屋形村の屋形養民は、中津の医学館から痘苗を得て村民への種痘を開始したこと、福岡藩領では郡医が早くに種痘活動を行い、武谷祐之は郡医から痘漿を分けてもらい、嘉永2年の末から種痘を始めたこと、小倉藩では安政5年(1858)に牛痘を牛に種えてリフレッシュさせる再帰牛痘法を安政5年(1858)段階で郡医らが試みていたこと、天草では、上津深江村字太田に種痘山という種痘実施施設を創始し、大村藩の古田山種痘所での種痘心得のある医正を招き、人痘法での接種を続けていたが牛痘伝来後は牛痘による接種に転換したこと、宮崎では、若山牧水の祖父若山健海が嘉永3年ころから実施したこと、薩摩では前田杏斎が嘉永2年に長崎から牛痘を得て実施、その門人の黒江絅介は高岡郷(現宮崎市)で嘉永3年に実施したこと、熊本藩では、高橋春圃と寺倉秋堤が長崎で牛痘を学び種痘を実施し、明治3年の熊本医学校が設立には、寺倉秋堤に種痘術を教えた吉雄圭斎が招かれ、種痘普及を契機とする地域医療の近代化が始まったことなど、新しい事実が判明した。この基盤研究において、九州諸藩における種痘普及により、洋式医学校の設立など地域医療の近代化をめぐる在村蘭方医の人的ネットワークが主要な役割を果たしていた実態が判明した。
今後の方策
 今後は、これらの研究成果をもとに、九州・長崎から、全国諸地域の町や村段階へ種痘がどのように伝来したのか、地域医療の近代化がどのように進められたか、地域民衆や漢方医らの医療観がどのように変化したか、地域の行政にとって流行病に対する予防がどのように整備されていったかなどを、各地に伝来する種痘史料の発掘と研究調査を通じて、詳細に実証的に研究することが、今後の医学史研究にとって全国的な種痘研究を目指す。

 

科研費c「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究」(『略称:種痘伝来』) 

本研究は、九州諸地域の牛痘種法(種痘)の伝播と地域医療の近代化の解明を目的とし、収集
した種痘資料を随時ホームページで公開し研究の一層の進展に資する。18 世紀末にジェンナーが
発明した牛痘種法は,約50 年後の嘉永2 年(1849)長崎で活着し、数年のうちに我が国各地に伝
播し、庶民の西洋医学への認識に強い影響を及ぼした。我が国での主たる伝播経路は解明された
が、九州各地域への種痘普及の実態およびその医学的・社会的影響の究明は不十分である。そこ
で種痘普及に関し、①前提としての紅毛流医学や人痘法の普及、②在村医らの果たした役割、③
公衆衛生の芽生えともいえる諸藩の医療政策としての展開、④地域の医療近代化・医学教育にど
う影響したかなどを解明し、医学史、科学史、文化史、近世史、近代史研究などに学術貢献する

研究会活動

種痘科研関係者各位
  29年度第2回種痘科研打ち合わせ会のお知らせ
                             研究代表者青木歳幸
  下記により、第二回打合会を開催しますので、お集まりください。
 日時:11月5日(日)
 場所:電気通信大学東3号館301号室
 時間:17:15~19:15(洋学史学会ミニ・シンポ終了後)
 議題:1.科研費報告書史料集の準備状況
    2.30年度科研申請について

平成27~29年度科学研究費補助金(研究種目 基盤研究(C) )研究課題番号:15K02867

      「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究」

                     研究代表者(所属機関・部局・職・氏名)

                    佐賀大学地域学歴史文化研究センター・特命教授・青木歳幸

        29年度第1回研究会開催要項

 下記により科研費「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究」(略称:種痘伝来)29年度第1回研究会を開催しますので、長丁場な日程ですが、ぜひ、ご参集ください。

 日程

 8月4日(金)

  10時から12時まで、九州大学耳鼻咽喉科学教室・久保記念館

                医学歴史館、人体・病理ミュージアム見学

  12時00分~ 昼食 医学部周辺

  13時30分~ 29年度第1回研究会(Ⅰ部・於九州大学医学部附属図書館)

    議題1.研究報告書・今後の日程について(青木)

      2.研究報告

        海原 亮「若山健海種痘資料と延岡の医療環境(仮題)」

        山内勇輝「大村藩の種痘伝播と藩医 長与家(仮)」

        大島明秀「寺倉秋堤の種痘伝習について」

        相川忠臣「長崎の種痘について」

  15時30分~16時50分まで、九州大学医学部図書館展示室見学 

  17時00分~研究会(Ⅱ部、於・九州大学医学部附属図書館)

        ミヒェル・ヴォルフガング「中津の種痘」

        青木歳幸「小倉藩領の種痘」ほか

  19時00分~ 懇親会・食事

 

 

科研費c「九州地域の種痘伝播と地域医療の近代化に関する基礎的研究

本研究は、九州諸地域の牛痘種法(種痘)の伝播と地域医療の近代化の解明を目的とし、収集
した種痘資料を随時ホームページで公開し研究の一層の進展に資する。18 世紀末にジェンナーが
発明した牛痘種法は,約50 年後の嘉永2 年(1849)長崎で活着し、数年のうちに我が国各地に伝
播し、庶民の西洋医学への認識に強い影響を及ぼした。我が国での主たる伝播経路は解明された
が、九州各地域への種痘普及の実態およびその医学的・社会的影響の究明は不十分である。そこ
で種痘普及に関し、①前提としての紅毛流医学や人痘法の普及、②在村医らの果たした役割、③
公衆衛生の芽生えともいえる諸藩の医療政策としての展開、④地域の医療近代化・医学教育にど
う影響したかなどを解明し、医学史、科学史、文化史、近世史、近代史研究などに学術貢献する。  

研究会活動の内容

3年間の研究期間に研究代表者青木歳幸は、1)佐賀藩医学史研究、とくに支藩領への種痘普及
の実態解明を行う。2)九州諸藩領(含幕領)の種痘史料を収集し、資料の整理、ホームページへ
の公開を行い、研究の基礎を充実させる。3)種痘を通じて医師のネットワーク、医学教育への影
響、地域医療の近代化の解明という九州での在村蘭学研究を行う。W.ミヒェルは、1)村上医家資
料館、大江医家史料館、歴史民俗資料館、福沢記念館、小幡記念図書館などの器物・文書史料をもと
に、中津藩領の種痘関係史料を収集し、医学校形成などの医学教育との関連を究明する。2)漢
方医の西洋医学情報の収集と医療実態を解明する(大江家、村上家、屋形家、田渕家、田原淳、小幡英之
助、藤野玄洋、田代基徳など)。研究分担者大島明秀は、近世・近代の熊本藩(地域)の種痘の実
態や熊本藩医学教育の漢方から洋学校への転換を明らかにする。研究協力者海原亮は全国との医療史
研究の比較をし、小川亜弥子は萩藩との比較研究をする。

研究内容」への3件のフィードバック

  1. 種痘科研関係者各位
      29年度第2回種痘科研打ち合わせ会のお知らせ
                                 研究代表者青木歳幸
      下記により、第二回打合会を開催しますので、お集まりください。
     日時:11月5日(日)
     場所:電気通信大学東3号館301号室
     時間:17:15~19:15(洋学史学会ミニ・シンポ終了後)
     議題:1.科研費報告書史料集の準備状況
        2.30年度科研申請について

    以下、洋学史学会関連事業の案内です。関連委員はこちらもご参加ください。
                               編集委員長  青木歳幸
       洋学史研究事典編集委員会
    日時:2017年11月5日(日)10:00~12:00
    場所: 場所:電気通信大学東3号館301号室
    議題 1.見本原稿検討
       2.研究編項目、執筆者検討
       3.地域編項目、執筆者検討
       4.付録編検討
                             洋学史学会会長沓沢宣賢
     各位
    秋涼爽快の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。2017年度11月例会を、下記の通り開催いたします。
    日時:11月5日(日)午後1:30~5:00
    場所:電気通信大学(京王線調布駅) 東3号館 301教室
    ミニ・シンポジウム 「近世長崎の人と学問-『長崎先民伝注解』によせて-」
    13:30-13:35 趣旨説明:平岡隆二
    13:35-14:20 川平敏文「長崎という磁場―唐通事盧草拙を中心に―」
    14:20-15:00 吉田宰「西川如見の水土論と神道思想」
    15:00-15:10 休憩
    15:10-15:50 平岡隆二「長崎聖堂の学問と教育-向井元成、唐蘭御用、地役人教育-」
    15:50-16:10 コメント:大島明秀
    16:10-17:00 総合討論:司会・松方冬子
    洋学史学会事務局 182-8585 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1
    電気通信大学電気通信学部 佐藤賢一研究室気付
    E-mail:yogakushi@yogakushi.jpn.org Tel:042-443-559

  2. 研究成果を論考集と史料集として公刊予定です。
    論考は『天然痘との闘いー九州の種痘』(岩田書院、2018年58月刊行予定)
    論考は、九州の種痘(青木歳幸)、佐賀の疱瘡神(金子信二)、ヨーロッパ人が観た日本における天然痘(W・ミヒェル)、人痘法の普及(青木歳幸)◎牛痘伝来前史(青木歳幸)、佐賀藩の種痘(佐賀藩・鹿島藩・蓮池藩など)(青木歳幸)、多久領の種痘(青木歳幸・保利亜夏里)、中津藩における天然痘との闘い(W・ミヒェル)、熊本藩の治痘(大島明秀)、宮崎の種痘ー若山健海を中心に・(海原 亮)、薩摩の種痘(田村省三)、大村藩の種痘(・山内勇輝)、黒江家文書にみる種痘(今城正宏()長崎の種痘(相川正臣)小倉藩領の種痘(青木歳幸)、武谷祐之と福岡藩における牛痘の導入(W・ミヒェル)長州藩の医学館と種痘(小川亜弥子)

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